愛すべき釣り人達〜ルアーマン・前編〜
2003/05/11

「たけちゃん、悪りぃんだけどなぁ。上越にメンテ行ってくんねぇかやぁ」
・・え?上越?・・元請のシゲさんからの電話ですね。
「去年の仕事だわ。ちょいと早えぇけど、1年メンテやってくれっつうんだわ」
・・あぁ、あの海沿いの現場ねぇ・・
「頼むわぁ・・」
「シゲさん、頼むっつわれてもなぁ・・地元の仕事もあるでねぇ」
・・やった!海の近くだ!・・
「そんなこと言わねぇでさぁ。日帰りで大丈夫だからさぁ」
・・え?泊まりのほうがいいのに・・
「シゲさんの仕事じゃ断れねぇわなぁ。何とかするわねぇ」・・竿、持って行くぞ〜!・・
仕事絡みなんですが、久しぶりに海釣りができそうですよ。仕事は9時過ぎですから、夜中に出発して朝釣りでもしましょうかねぇ・・・

寝ぼけ眼の空はウトウトと朝寝を決め込んでいるようですね。星達の喧騒はすっかりと落ち着き、名残り惜しいそうな一等星が忙しく私に話し掛けているようですよ。足元では優しい波が静かに朝日を待ちわびていますね。思いっきり潮風を吸い込んで伸びをしましょうか・・・「う〜〜〜んっ・・・ふぅっ!」気持ちいいですねぇ。身体中が洗われるようですよ。やっぱり海はいいですねぇ。

さて、仕事前のひと時を楽しみましょうかね。今日はね、私、投げ釣りデビューなんですよ。実はzenさんに憧れて、カレイを釣りたくなりましてねぇ。波平爺や大阪のネコさん、松タカオちゃんや向洋丸さん達に色々教わったんですよ。zenさんの理路整然とした教え、波平爺の可笑しくも実になるお話、大阪のネコさんの暖かい励まし、松タカオちゃんのネット情報、向洋丸さんの現地情報・・・そして今、やっと投げ竿を手に埠頭に立つ事ができたんですよ。磯竿も持ってきたんですが、先ずは投げですね。ダム湖での練習の成果をお見せしましょうね。

記念すべき第1投目です。右手はテコの支点・・左手を体に引きつけるように・・
「とぉりゃ〜〜!!」
ヒュッ!・・新品のFVは綺麗な弧を描き、PEラインを繰り出す。精悍な面持の仕掛けは水平線に吸い込まれるように消える・・筈・・ありゃ?どこへ飛んでった?目を凝らし、飛び去る仕掛けを探す眼鏡のフレームの外にボチャン!・・はは、無事着水・・ありゃま、あんな右のほうに飛んでっちゃいましたよ。う〜ん、海を前にしてチョット力が入っちゃいましたかねぇ。よし、もう一度挑戦してみましょうか。
「そりゃ!」
ヒュッ!・・お?今度は真っ直ぐ飛んでいきましたよ。シュルシュルとPEラインが気持ちよく繰り出されますね。よしよし、一服しながらアタリを待ちましょうかね。

「こんにちは、どうですか。釣れてますか?」・・ん?誰だ?・・
投げ竿?に大きなリール、PEラインが巻いてありますね。おや、竿先にはミノーですか?ルアーがぶら下っていますよ。屈強な印象のする初老の男性ですね。
「あ、こんちは。今、始めたばかりですから」
「そうですか。カレイ狙いですかな」
「はは、投げは初めてなんですよ。釣れますかどうか」
・・1投目、見られちゃったかな?・・
「今日はいいと思いますよ。午後のほうがいいかな」・・へ〜、午後ねぇ・・
「普段はどんな釣りをされるんです?」
気さくな人ですねぇ。傍らの竿ケースをチラッと見ながら隣に座り込んでしまいましたよ。
「メジナが好きなんですが、最近は磯にもなかなか行けなくなっちゃいましてね」
「ほう、磯釣りですか。大潟まで行けば、防波堤ですが黒鯛が出ますよ」
「ええ、去年行きましたよ。今頃だったかなぁ、良い型が上がってましたね。あ、お茶でもどうです?」
「どうも、ご馳走になります」
あらら、いつの間にか釣り談議に花が咲きはじめましたね。私が何度か仕掛けを投げ直している間も話は弾んでいますよ。
「今日は一日釣られるんですか?・・おや?何か付いたようですよ」
・・え?これがアタリ?・・仕掛けを上げてみましょうかね。
「いや、仕事があるんですが2時頃には出直せるかもしれませんね」
・・ホントに釣れたの?・・全然引きませんよ。
「そうですか、今日は連休で混むだろうな。・・あ、カレイですね」・・あ、カレイだ・・
「はは、釣れちゃいましたよ。可愛いカレイですね」・・これは持って帰れませんねぇ・・

2時間程の雑談が続きましたよ。その間に、ルアーは3回程投げられただけですね。私は掌に乗ってしまうようなカレイが3枚・・はは、デビュー戦にしては上出来ですかね。
「どうもお邪魔しました。頑張ってくださいね」・・え?行っちゃうの?・・
「あ、いや、どうも・・」
「午後いらっしゃるなら、ここに来ませんか?私、釣ってますよ」
・・あ、今日は午後がいいのか・・
「はい、何とか時間が作れたら来ますね」
「お待ちしてますよ。お茶、美味しかったです。では、また」
「はい」

気持ちのいい人でしたねぇ。それにしても、午後のほうがいい・・こんな事ってあるんですかねぇ。水温や干満の関係なんですかね。これは挑戦するしかないですよ。
さて、仕事を早く終わらせてきましょうかね。

・・・つづく・・・