山人、海を行く〜試練〜
2003/02/04

テンカラの要領でコマセを撒けるようになりましたね。見て下さい、私の足元には魚が湧き上がっていますよ。サラシを釣れ!なんて言わないで下さいよ。だって目の前に、こんなに沢山の魚がいるんですよ。しかも、私の撒いたコマセに集まって来たんです。感動ですねぇ。よ〜し、釣っちゃうぞ〜!餌はオキアミ。尾を取った腹掛けで良いですね。さあ、待ちに待った第一投ですよ。

「ヨイショっと」いいぞ!集まった魚の脇に仕掛けは沈んでいきますよ。竿を煽って、道糸を十分に出しましょうね・・・そろそろ馴染んだのかな?ウキは群がる魚達の上を流されて行きますね。ウハハ!いいぞ〜、教科書通りですよ。と思った瞬間、ギューンって音が聞こえたんです。ウキが海中に引き込まれるのと同時に、ホントにギューンって聞こえたんです。

「来た!」大きくゆっくりアワセると、グンッ!グググッ!「うおっ、凄げぇ引きだぁ」魚は底へ逃げようと、激しくもがいているようです。こんな荒っぽい引きは岩魚では味わえませんよ。竿を立てて、リールを巻くんですよね。意外にも冷静な私の脳味噌は教科書のページをめくっています。

『魚に強く引かれた場合、リールのスプールが空転して、道糸が自然に出るようにドラグを調節しておきましょう』ん?ドラグだ。ドラグを緩めると、ジジジーと云う音と共に道糸が出ていきますよ。「ウホォ〜、カッコイイ!テレビと同じだでぇ」ドラグを道糸が出ないところまで調節して・・「そういやぁ、テレビじゃぁ竿ぉ倒しながらリール巻いてたっけなぁ。やってみっかなぁ」

『魚を引き寄せる時は竿を立たまま、慌てずにリールを巻きましょう。竿を煽りながらリールを巻き上げるポンピングは、大物を引き寄せるテクニックです。初心者の場合、トラブルの原因となる恐れがあります』おっと、危ない。格好をつけて魚をバラしたんじゃ話になりませんね。ここは教科書通りに引き寄せましょう。それにしても、いい引きですよ。おっ、魚が見えてきましたね。この波の中で、上手く空気を呑ませられますかねぇ。もう少しで顔が水面を割るという時、魚は突然の反転。「うおっ!やべぇ!」岩魚も最後の反撃を試みるものですが、それとは比にならない反撃ですよ。

『海釣りでの取り込みには、タモを多用します。磯釣りの場合、釣り座の条件も悪いので、無理をせずに同行者にタモを出してもらうのも良いでしょう。きっと助けてくれますよ』そうだ、中さんが側にいる。「中さ〜ん!タモォいいっすか〜」私の目尻に映る中さんは見向きもせず一言。
「あに言ってるだぁ、そんな木っ端ぁ引き抜いちまえ!」え?助けてくれないじゃん・・
「そんなんでタモォ使っちゃぁ、笑われっどぉ」そんなんって、いい引きなんですケド・・

いやはや、中さんに見放されたら頼る人はいませんよ。え〜い、思い切って引き抜いてしまいましょうか。道糸が弛まないようにリールを巻きながら竿を倒し、一気に引き抜きます。「ウォリャ〜!」・・・・スポッ!
ありゃ?魚は呆気なく空中に飛び上がり、私の目の前でピチピチしながら左右にブラ〜ン・・・20cm程のメジナさんでした。その後、私は大爆釣?相も変わらずメジナさんを相手に「ウォリャ〜!」「トリャ〜!」と、引き抜きの反復訓練を続けます。

お魚の食事が終わった頃には私達の腹ごしらえですね。皆で握り飯とお茶を囲みましょう。「たけさん、調子がいいですねえ」研究会の方が、中さんのクーラーを覗き込んでいます。「いや〜、そんな事ないっすよ〜」超ド級初心者の私は、照れながら真面目に答えてしまいます。

「あ、中ちゃんのはどうしたの?」研究会の方が、中さんの釣果を気にします。
「おう、オラァのはスカリに放っといたで」中さんは握り飯を頬張っています。
「中ちゃん、いいじゃない!」スカリを上げた研究会の方が叫びます。
「おう、今日は木っ端集めの潮下だからなぃ」中さんは握り飯を頬張っています。
「中さんの大きいんですか?」恥知らずの私がスカリに近づきます。
「うわぁ〜」私は腰を抜かします。だって、40cmオーバーを筆頭に五枚・・・

「木っ端集めと潮下の法則」を知るのは後々の事なんですがね、この日は私も大物を釣り上げたんですよ・・・フフフ・・・

またまた、つ・づ・く・・・