濡れ鼠と化した私の手元には、竿とリール、ウキとサルカンとハリス。どうしよう・・・鉤も無くてどうやって釣るんだぁ?あんな怖い思いをしてまで磯に渡ったのに、竿も出せないの?あんまりだ〜ぁ。 「大丈夫かやぁ?オイ達も初っ端からえらい目に会ったなぃ。アハハ〜」磯を迂回するように、中さんが来てくれましたね。おや?荷物も持って来ちゃいましたよ。 そうですよね。中さんの言う通り。折角、遊びに来たんですから楽しみましょうね。中さん!仕掛けとオキアミ、お借りしま〜す。 さて、仕掛けも出来上がりましたね。さあ、記念すべき沖磯第1投ですよ。あっ、ちょっと待った。コマセ、コマセ!コマセを撒かなきゃね。ここで焦ってはいけませんよね。コマセを撒いて、お魚さんを集めなければ。どれどれ、柄杓に詰めて、初コマセ撒きです。ムフフ・・・ワクワクしますねぇ。昔かじった事のある野球を思い出して・・・ 「たけちゃん、下からヒョイッて撒きゃぁいいだよ」アハハ、中さんに見られていたようですね。以前、テレビで見た時はオーバースローで格好良く投げてたのにねぇ。アンダースローなんて、投げた事ないですよ。私、センターだったんですから・・・まあ、中さんの言う事を聞きましょうね。なんてったって今日は二度も助けられてますからね。それでは、アンダースローで・・・ 「ソリャッ!」あら〜、またセンターフライだぁ・・逃げろ、逃げろ。コマセのシャワーはもうイヤだ・・ 「あにやってるだかなぁ、たけちゃん。オイはフライ得意だねぇか。ちっとは頭使えやぁ」 は?中さん、フライですか?何でフライとコマセ撒き?大好きな中さんですけど、ちょっと飛躍しすぎではないですかねぇ。そもそもフライは軽い毛鉤を重いラインの力を借りて飛ばすんですよ。フライラインを使ったテンカラも同じですよね。後ろに跳ね上げたラインを一呼吸置いた感じで優しく頭上から振り込む・・・う〜ん、ちょっと待って下さい。優しく頭上から振り込む?頭上から優しくねぇ・・フフフ、解っちゃったような気がしますよ。とにかく試してみましょうね。 コマセを杓って、優しく頭上で「ヒョイッ」おっ!飛んだ!サラシの脇には程遠いんですが、コマセは団子状で着水しましたね。やった!成功ですよ。コマセ撒きは野球ではなく、テンカラだったんですね。もう一度、撒いてみましょうか。「ヒョイッ」おぉ〜!良い感じですね。同じ所に着水しましたよ。残るはコントロールですね。これもテンカラと同じ。数を投げて習得するものなんでしょう。 おや?見て下さい!コマセを撒いた所。あれは魚でしょう?底から湧き出るように、コマセの中に突っ込んでは底に帰って行きますね。スゴイ!スゴイ!よ〜し、もっと集めちゃいましょうか。「ヒョイッ」「ヒョイッ」うわぁ、バーゲンセールのオバチャンみたいに群がってきますね。海って、こんなに豊かなんですね。嬉しくなっちゃいますね。フフフ・・今日は初心者の私が竿頭ってか?
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