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山人、海を行く〜序章〜
2002/12/30

まだ明けきらない空が私達を迎えてくれましたね。外はそれ程寒くないようですよ。もっとも、私達の住む長野と比べてはいけませんね。ここは伊豆なんですから。

下田からむかって石廊崎の手前に小さな漁港があります。本瀬漁港。ここから渡船が出るんだそうです。
「オラァ船長んとこ行って来るで、オイ達は着替えて待ってれゃ」
中さんはスタスタと闇に消えちゃいましたね。漁港の暗闇の中で着替えましょうか。カッパを着て、磯ブーツを履いて、ライフジャケットは中さんが貸してくれましたよ。ハハハ、笛が付いてる。車中で中さんが言っていたのは、この笛のことですね。万が一磯から落ちてしまったら、磯へ上がろうとせずに沖へ泳ぐんだそうです。ヘタに磯へ近づくと、波で磯に叩きつけられることがあるそうです。そして、笛を吹く。まずは自分が落ちたことを皆に知らせるんですね。そうすれば、なんとかなるそうですよ。そんなこともあって、中さんが選んでくれた私のカッパは黄色です。ライフジャケットも黄色。「これなら、海ん落ったって目立つでや。アハハハ」・・だそうです・・チョッと恥ずかしい気もしますが、命には換えられないですよ。ここは先輩の言う事を聞きましょうね。

そろそろ、他の人たちも集まって来ましたねぇ。中さんの磯仲間だそうです。とりあえず御挨拶しておきましょうか。
「おはようございます。中さんと長野から来ました齊藤と寺島です。今日は宜しくお願いします」
「あっ、おはようございます。中ちゃんから話は聞いてますよ。沖磯は初めてだそうですね」
「はい。ご迷惑をお掛けするかも知れませんが、宜しくお願いします」
「ハハハ、大丈夫ですよ。荷降ろしもこの連中でやりますから、お二人は身一つで磯に渡ってください。今日は天気も良さそうだし、お互い楽しい釣りをしましょう」
「はい、有難うございます」

あぁ、いい人達で良かったですね。一番心配していた荷降ろしも、やってくれるそうですよ。中さんが前もって私達を説明してくれていたんですね。渡磯は一番危険な時だと聞きます。ましてや荷降ろしは共同作業ですからね。私達のような初心者が皆さんの足を引っ張ってしまったら大変ですよ。それにしても中さんの仲間達、カッコイイですねぇ。ライフジャケットや竿ケースに名前が入ってますよ。OOグレ研究会OO支部OO、OOグレ会OO、OOグレ友の会OO。へぇ、いろんな会があるんですね。やっぱり、釣り好きは仲間好きなのかなぁ。

「おはよう」おや?中さんが帰ってきましたよ。一緒に居るのは船長さんでしょうか、角刈りの、いかにも海の男ですね。船長は黙って船に乗り込み、何か準備を始めたようですね。
「さて、オラァも仕度するかなぃ」中さんが着替え始めましたね。いよいよ出航も近いのでしょうか。なんだかワクワクしてきましたよ。中さんの着替えを見ながら、気持ちを落ち着けるために一服しましょう。へぇ、中さんのライフジャケットは青色なんだぁ。綺麗な色ですねぇ。いつか私も、あんなライフジャケットを着てみたいなぁ。あれ?中さん、背番号が付いてますよ。OOグレ研究会 長野支部 中谷博。えっ?チョッと待ったぁ。中さん、カッコ良すぎ。
「中さん、研究会に入ってるだぁ?」
「オゥ、長野支部はオイラ一人だけんどナ。オイ達もグレにハマりゃぁ入れてやるどぉ」
「はぁ。」・・もう、この雰囲気にハマってます・・
「何も難しいこたぁ無ぇでな。フカセとグレが好きんなりゃぁ誰でも入れるだで」
「ふ〜ん。」・・入りてぇ・・
「まぁ、今日は皆にいろんな事教えてもらえばいいわぃ」
グォ〜ン!ドドッ!ドッドッドッ!ドドドドドド・・・!うわぁ、びっくりしたぁ。突然かけられた渡船のエンジン音に、私の声は掻き消されてしまいましたね。「中さん、ありがとう」って言ったのに・・・

渡船は一路、沖磯に向っていますよ。真新しい磯ブーツが始めて磯を踏みしめるのも、あと僅かですね。そう言えば、月面を人類初めて踏みしめたアームストロング船長の足跡は左足でしたっけ?いや、右足だったかなぁ。私はどちらの足を踏み出すんでしょうかね。

この日を境に、私の「メジナ追っかけ」が始まるんです。夏、岩魚。冬、メジナ。アハハ、おかげ様で、一年中お魚と遊べるようになっちゃいましたね。

つづく