農夫
「たけさん、頼むよぉ。毎年のことだんかぁ。」
「毎年ったって、いつもは苗だけだでや。」
「ヘーちゃん、体壊しちゃってなぁ。植付けできねぇだわ。」
「まいったなぁ・・・」
「たけさん、仕事忙しいだかぃ?」
「・・・いや・・・死ぬほど暇・・・」

ひょんなことから友人の農場をお手伝いすることになったんですよ。
苗作りは忙しいですからねぇ、ちょくちょく手伝っていたんですが、今回はちょっと話が違うようですね。

「ヘーちゃん、そんなん悪ぃだか。」
「うん、もう歳だしなぁ。苗の水くれぐれぇなら出来んだけど、畑にゃ出せねぇよ。」
「そっかぁ、そんなん悪ぃだかぁ・・・」
「だからさぁ、たけさんが来てくれればさぁ・・・ウチも百姓ったって一応会社んなってるからさぁ、カミサンだって安心だずぅ?」
「ん〜、そりゃそうだけどなぁ・・・」
「なっ、たけさん、頼むわぃ。」
「・・・そうだなぁ・・・嫌いな仕事じゃねぇしなぁ・・・やってみっかやぁ・・・」
「やった、決まりね。保険やらなんやら事務手続きはすぐ済ませっから、明日から来てくれやなぃ。」
「え?明日?そりゃまた急な話だわなぁ。」
「いいだんか、たけさん。どうせ暇なんだず?」
「・・・うん・・・死ぬほど暇・・・」

百姓はいいでぇ・・・
朝はなぁ、6時っちゃぁ畑にいるんだわ。夏場は5時だなぃ。
種をなぁ、大切にしてやるとなぁ、元気いい苗が育つんだわ。
苗はなぁ、ちょっと腹減らしてやって畑に植えてやるんだわ。
そうすっとな、苗はしっかり根を張るでぇ。土ん中の栄養をいっぱい吸うでぇ。
キャベツも白菜もレタスも・・・でっかくて元気いいのが育つでぇ。

百姓はいいでぇ・・・
人が暦につけた赤い日なんて関係ねぇだわぃ。
休みはなぁ、畑が決めてくれるんだわ。
「キャベツも順調に育ってるでや。そろそろ休めやぁ。」ってな、畑が休ましてくれるんだわ。
畑の言うことぉ聞いてりゃぁ、元気いい野菜ができるだよ。

百姓はいいでぇ・・・
畑もキャベツも白菜も、正直だでなぁ。
オラァのついた嘘なんすぐに見破ってなぁ、元気なくしちまうだわぃ。
こいつらぁ、かわいいでぇ・・・いろんなこと教えてくれるでぇ・・・
オラァ、好きだなぁ・・・