夏の記憶
遠い記憶・・・夏祭り
悪ガキ仲間と小銭をポケットに屋台へ走る
キラキラの屋台はオイラ達をくすぐる
ラムネに酢イカ、くじを引いて、小銭が尽きる
ボンボン片手に綿飴を舐める浴衣姿の同級生を横目で見ながら
小石をビー玉変わりに境内の片隅でいつもの遊び

夏の夕・・・突然の雨
大人達は境内の詰め所へ走る
子供達は社の軒下へ走る
浴衣姿の同級生も
小石を握り締めた悪ガキ達も
社の軒下でおしくらまんじゅう
汗の匂いと、ちょっとだけお洒落した浴衣の匂いが混ざり合う不思議な空間
稲妻が走る
浴衣姿の同級生は悲鳴をあげて耳を塞ぐ
オイラ達は見栄を張って空を見つめる

夕立が去り、涼しげな風と共に
また祭りは始まる
社の軒下は何事もなかったように
祭りを見下ろす

家に帰ると、爺ちゃんが仲間と呑んでた
「おぅ、たけぇ、凄げぇ雷だったなぃ。」
「うん、おどけたぁ・・・」
「そろそろ稲も穂を上げるかやぁ・・・」

稲妻・・・稲の妻・・・
稲妻が走ると、稲は穂を上げるそうです。