安上り
仕事が早く終わった日は、夕方に待ち合わせるんです。いつもの場所で、いつものように。
私は一張羅のウェーダーをはいて、彼女への贈り物をそっと鞄に詰め込みます。今日の贈り物は彼女のお気に入り、「浮かれ孔雀」。キュッと腰の引き締まった孔雀の体にグリズリーの羽。16番の鉤は彼女の口には程好い大きさのようです。夕マヅメの食事時には、何の躊躇いも無く食べてくれます。そんな彼女が愛しくて・・・足繁く通う私を、彼女はいつでもそこで待っているんです・・・なんちゃって〜(^^ゞ
早い話が、岩魚を釣り上げたいんです。掛かった時、ブルブルッと伝わって来るあの感触を味わいたいんですね。征服感っていうのかなぁ、満足感・・・?何とも云えない幸せな気分になっちゃうんですね。これって遥か昔、ホモサピエンスが狩猟だけで生きていた頃からの思い出なのかなぁ。その頃からのDNAがそうさせるのかなぁ。血が騒ぐ、アドレナリンが放出する・・・う〜ん上手い表現が見つからないなぁ。とにかく幸せな気分になっちゃうんですよ。子供の頃、初めて自分の鉤に魚が掛かった時を引きずっているような、不思議な気持ちですね。今でもその気持ちに変わりはないんですけどね、でもチョット違うんですよ。幸せな気分になるチャンスが増えたって云うのかな。イヤイヤ、数を釣れるようになったとか釣りが上手くなったとか、そんなんじゃないんです。竿を持たなくても幸せになっちゃうんですよ。安上りでしょう?元々、安普請な脳味噌ですからねぇ。アハハハ〜・・(^_^;)

忘れられない釣りってありませんか?自分でも気味の悪いほど鮮明に思い出せる風景。その時の川の流れや鳥の声、頬に感じる風の感触。みんな憶えている釣りってありませんか?「大潮」でお話した「彼女に会いたくて」は、そのひとつですねぇ。あの話、十年程前の話なんですよ。あの頃小学生だった息子が、この三月には高校を卒業するんですから・・たぶん卒業できるハズ。親子共々、安普請な脳味噌?デス・・でも何故かハッキリと憶えているんですね。そんな釣りを誰もが幾つかは持っているんじゃないかなぁ?私は沢山持ってますよ。あの沢の、あの岩魚。あの磯の、あのメジナ?イスズミ?あの防波堤の大チヌ!・・の子供(T_T)・・みんな私を幸せな気分にしてくれます。思い出す度、一人ニヤニヤしてるんです。
「それが何なの?」って言ってしまえば、ハイ!それま〜で〜よ〜!ですね。でもね、そんな事を大事にしたいな〜、なんて考える今日この頃・・・歳かなぁ・・・