有明の夜〜旧友〜
2003/09/10

「もしもし、太公ちゃん、駅に着いたよ。」
「お、着いたか。迎えに行くから改札口で待ってってね。」
「はいよ、了解です。」

・・・・・・・・・・

7月の終り頃だったでしょうか、チャットルームで太公ちゃんと話していた時の事・・・
「ねえ太公ちゃん、8月か9月に東京へ行く用事があるんだけど、会おうか。」
「ん?仕事か?来い、来い。ホテルなんぞに泊まらず、ワシの家に泊まればよい。和室を提供しよう。」
「え、いいの?」
「構わん。夜は・・・そうだな・・・有明で釣るか。」
「うぁお!嬉しい!宜しくね。」

話は決まったのですが、8月は盆休みも無い状態が続いちゃったんですよ。地元の仕事に追われ、有明どころか近所の沢への釣り残業もままならず、ストレスがお腹にたまってしまいました・・・
え?お腹の膨らみはストレスじゃない?・・・脂肪?・・・ははは、中年なんとかってヤツですかねぇ・・・お恥ずかしい・・・

「たけちゃぁん、いつ来るんだぁ?ズッキーが待ってるぞ。」
「ごめぇん、太公ちゃん・・・えっとね・・・9月の6〜7日になりそうなんだ。」
「フム・・・いかんなぁ。長潮で最悪じゃ。」
「あらら、そうなの?・・・ま、楽しめればいいよ。」
「フム・・・考えておこう・・・」
その後はとんとん拍子に話が進みましたよ。
「zenです。私も参加します。宜しくお願いします。」
・・・うぁ、zenさんにも会えるんだ。嬉しいなぁ・・・
「タカオちゃんで〜す。私も行きますよ〜(笑)」
・・・あははは、凄い事になってきたなぁ。楽しみだぁ・・・

・・・・・・・・・・

改札口・・・
「・・・太公ちゃん・・・?」
「たけちゃん、よく来たね。」
「はぁ・・・やっと会えたぁ・・・」
不思議なものですね、すぐにわかりましたよ。ガッチリと握手を交わし、まるで旧友との再会のような初対面ですね。
類は友を呼ぶ・・・釣り人は釣り人を呼ぶ?
同類相憐れむ・・・釣り好き相楽しむ?
朱に交われば赤くなる・・・釣りに交われば夜が更ける?
なんて諺がある筈もないんですがね・・・ははは。
「家に来てゆっくりするか?竿でも眺めりゃ楽しいだず?」
・・・ははは、太公ちゃん、信州弁だぁ・・・

シャワーを戴いた後、通された和室には畳の香りが心地よく漂っていますね。和茶碗が贅沢な程の空間に並ぶ棚の向こうには竿でしょうか、布袋に包まれながらその時を待っているようですよ。部屋の中程には落ち着いた趣の和卓・・・おや?・・・酒と肴ですね・・・ははは。
「たけちゃん、今夜はどの竿を使う?」
・・・どの竿ったって、みんな和竿じゃん。わかんないよぉ・・・
「これがいいかな。ほら、持ってごらん。」
・・・うぁ、芸術作品みたいだぁ・・・
一通り和竿を握らせてもらいましたよ。どれもこれも崇高な気配を醸し出し、目を見張りますね・・・でも、お酒だけは、しっかりと戴いちゃいましたよ・・・はは・・・御馳走様でした。
「さてと、たけちゃん、そろそろ出かけようか。」
・・・いよいよですね。有明でzenさん、タカオちゃんと待ち合わせですよ・・・
お借りする竿も決まり・・・和竿ですよ、ワクワク・・・いざ、有明へ出発ですね。

有明・・・凄いなぁ、待ち合わせ場所の大きな窓からは海が一望できますよ。手前にはフェリーが出航を待っているようですね。向こうに見えるのがディズニーランドかぁ、でっかい観覧車ですねぇ。
「たけちゃん、あそこがさっき話したところだよ。それでね・・・」
「うんうん・・・」
太公ちゃん、とっても詳しく説明してくれますね。今日釣る場所も教えてくれましたよ。
・・・ふ〜ん、あそこで釣るのかぁ。早く暗くならないかなぁ・・・
タララッタ♪タッタッタ♪
「ん?タカオちゃんから電話だ・・・もしもし、今どこ?」
タカオちゃんから太公ちゃんに連絡がありましたよ。渋滞に巻き込まれたらしいんですが・・・遅れるんですかねぇ・・・
「え?着いてる?どこに居るの?」

あれ?こちらに歩きながら電話をしてる人がいますよ・・・
あ、タカオちゃんだ・・・
「こんにちは。」

「ど〜も〜。」
・・・あ、zenさんも一緒なんだ・・・
「え〜と、どちらが太公さん?」
・・・いけね、自己紹介しなきゃ・・・
「タケです。宜しくお願いします。」
「こちらこそ、宜しくお願いします。」

有明は穏やかな面持ちで私たちを迎えてくれたようですね。
海の向こうに点滅する灯りが私達を微笑ましく見守ってくれているようですよ。
「さて、そろそろ行こうか。」
太公ちゃんの声に背中を押され、初対面の旧友達は暗い有明へ消えて行きます。

つづく