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再会〜後編〜
2003/07/25

「たけぇ、いるかやぁ?」
おや、ボンおじちゃんが迎えに来てくれましたね。昨日の約束通り、久しぶりに二人のテンカラ行ですよ。楽しみですね。
「ほ〜い、すぐ行けるでぇ。」
「ははぁ、相変わらず釣りだけぁ用意がいいなぃ。そんくれぇ真面目に学校行ってりゃぁ学者んなったかも知んねぇどぉ。あっはっは。」
「あははは、おじちゃん、うまい事言うわぁ。ねえ、アンタ。」
・・・おいおい、カミサンまで一緒に言うかぁ・・・
「さてとぉ、たけぇ、何所行くかやぁ。」
「昔よく連れてってもらった東沢がいいんだねぇ?あの辺りは変わってねぇでなぁ。」
「おし、東にすっか・・・懐かしいやなぁ・・・」

練馬ナンバーのピカピカの四輪駆動車の助手席は、どことなく、よそよそしい雰囲気で私を迎えてくれましたよ。助手席の向こうでは、ボンおじちゃんが皺くちゃの顔で目を細めていますね。
・・・おじちゃん、歳はとったけど変わんねぇなぁ・・・
私がまだ子供の頃、おじちゃんはボロボロの軽トラの助手席に私を乗せ、山や沢へ連れて行ってくれたんですよ。時には私の友達、マコトやクドチャンを荷台に乗せ、田圃道をぬけて林道へ吸い込まれていったんです。
そういえば、カミサンも一緒に行った記憶がありますよ・・・当時のカミサンは、棒切れを振り回しながら私達を追い掛け回していた、ガキ大将?女番長?だったんですがね・・・はは、妙な事を想い出してしまいましたね。

「変わってねぇなぁ。懐かしいわなぁ。この辺りだったかやぁ・・・」
ボンおじちゃんの目は、ますます細くなるばかりですね。
「この辺りは大も連れて来た事があるんだでぇ。」
「ん?たけの息子かぁ。岩魚遊び人四代目だなぃ・・・あっはっはぁ・・・おし、こっから釣るか。」
車を林道の山側に停め、沢に降りましょうか。
あらら、おじちゃんはもう降り始めていますよ。大丈夫ですかねぇ。昔とは体力が・・・
ははは、見てくださいよ。余計な心配でした。ほら、木の根を利用して、上手に降りてますね。私に教えてくれた通りですよ。いやはや、おじちゃん、まだ現役だわね。

「ほぉ、たけから釣ってみぃ。」
「うん。」
・・・スッと振り込んで、ツーッと・・・来ねぇなぁ・・・スッ、ツーッ・・・シャッ!
「おしっ!」
軽くアワセて・・・あれ?掛かってねぇやぁ・・・吐き出されたかやぁ・・・
「ははは、そりゃ掛からねぇわぃ。岩魚まかせだでなぁ。」
・・・え?岩魚まかせ・・・?
「今度ぁオラァだでぇ。たけ、よく見てれやぁ・・・」
おじちゃんは一つ上段の小さな落ち込みを狙うようですよ。
・・・スッと振り込んで、ツーッと・・・ツンツン、クイッ、ガバッ!
「ほいっ!たけぇ、来たでぇ。」
・・・すげ〜、おじちゃんの得意技、誘い毛鉤。ウデは落ちてねぇやなぁ・・・
「ほぉ、たけもやってみれや。毛鉤、くれるで。」
「わぁ、懐かしい毛鉤だなぃ・・・やってみっかやぁ。」
・・・スッと振り込んで、ツーッと・・・ツンツン、クイッ・・・

・・・・・・・・

「アンタァ、起きなよぉ。仕事遅れるよぉ。」
「・・・ん〜〜・・・」
目覚めれば、そこには嘗ての女番長・・・うぁ!びっくりしたぁ・・・
「大はもう仕事行ったでぇ。アンタも行かなきゃ。」
「ん〜・・・おじちゃんはぁ?・・・」
「おじちゃんって・・・?」
「・・・ふぁぁ・・・夢みてたわぃ。ボンおじちゃんの・・・」
「ははは、おじちゃんが来てくれたの、もう3年くらいになるかやぁ。」
「体ぁ良くなっただかやぁ。倒れて2年だでなぁ。」
「そうだね。おばちゃんの話じゃぁ、最近は時々起きて毛鉤巻いてるらしいでぇ。」
「・・・おじちゃんらしいやなぁ・・・今度、見舞いに行って来るかやぁ。」
「そうだねぇ・・・アンタァ、早くしないと遅れるよ。」
「いや、今日は休みだで。釣り行って来るわ。」
「ははは、今日はどこ行くだぁ?」
「・・・東沢・・・だな・・・うん・・・」

・・・なぁ、たけぇ。毛鉤ってのはなぁ、どんなん綺麗に巻いたって虫にゃぁならねぇんだど。毛鉤は毛鉤、虫は虫さぁ。そんな事ぁ岩魚が一番知ってるんだわ。だからなぁ、毛鉤を岩魚に見しちゃいけねぇんだど。見られちまえば虫じゃねぇって解っちまうかんなぁ。見せねぇで、気付かせるんだわなぁ。気付いた時ゃぁ喰らいついてたぐれぇになぁ。なぁ、たけぇ。岩魚ぁ釣るのは毛鉤じゃねぇどぉ、人が釣るだどぉ・・・