「かよ」は東京から嫁入りした、我が家の娘なんです。 「お〜い、アルたけ。呑んどるか?」・・アルたけ。ははは、私のことです・・ こんな話が始まりだったんです。太公望さんが持っている和竿、竿尻から穂先まで竹作りのヤマベ竿が未使用なんだそうです。太公望さんはその竿が持つ本来の使命ってのかな・・あるべき場所で、あるべき姿を・・竿が幸せに暮らせる場所を探していたようなんです。 先日、私は「和竿」と「たけぱん二段スペシャル竿」を手に横沢の上流へと向ったんです。太公望さんの和竿に居着きの綺麗な岩魚を見せたくてね。半年以上ぶりの横沢上流。北斜面はまだ白く、小楢たちは寒々と手足を震わせていますね。沢は雪解けが始まり、青い濁りの中に白泡を見せながら流れ落ちていますよ。この流れの中で岩魚達は冬を越し、聞こえ始めた春の声に胸を高鳴らせているのでしょうね。南斜面はちょっと景色が違いますね。薄茶色の山肌が来るべき春を待ち焦がれていますよ。中流域の陽だまりにはフキノトウも見えますね。林道が消えたその先は、初夏からはとても歩けない藪沢になってしまうんですよ。半分以上は、山登りの沢釣りになるんですね。木々が葉を落としている今が旬、ですかね。 朝7時頃に入渓し、「たけぱん二段スペシャル」を手にお昼頃まで遊んだんです。居着きの綺麗な岩魚達は、胃袋をパンパンにしながらも私の川虫に飛びついて来ますよ。冬の間、ジッとお腹を空かせて待っていたんでしょうね。夢中になって、流れ落ちてくる小さな虫を貪っているようですね。握り飯をいただいて、早めに下りましょうか。今日は特別の日ですからね。沢沿いに山を下り、林道に出る50m程上からは沢を離れ、山中を歩きましょうね。歩くと云うより這うですかね。結構キツイ斜面になりますよ。林道に出ました。さて、今日のメインディッシュの始まりですね。林道から30m程は朝も竿を出していません。帰りも遠回りをしましたね。つまり、林道から30mは荒れていないことになるんですよ。 竹竿を継ぎ、いよいよですね。少し開けた小さな溜りにしましょうか。竹竿を持っての沢登りは難しいですからね、溜りで粘ってみましょうよ。餌は川虫ですよ。一番釣れる餌ですね。和竿のデビューには持って来いでしょう?そしてね、道糸は0.8号、目印は鮎用のピンクを二つ、ハリスは鮎用の0.3号、錘は付けません。鉤はフライの12番、岩魚鉤より遥かに小さいでしょう。「和竿デビュー完全ゼロ仕掛け」ですよ。とっても軽い仕掛けですね。これで川虫はとても自然に流れに乗ってくれるでしょうね。落ち込みの白泡に、そっと仕掛けを馴染ませましょう。川虫は白泡に揉まれ、勢いよく流れ落ちますよ。白泡が消え、トロッとした流れに川虫が辿り着く緊張の瞬間、クンッ!仕掛けは上流に戻されます。 「お〜い、アルたけ。呑んどるか?」・・はは、太公ちゃんだ・・ 「かよ」は東京から嫁入りした、我が家の娘なんです。 太公ちゃん、もう一度だけ・・・「かよ」に・・・乾杯!
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