探りの休日
2002/10/27

武石川を上っていくと右手にグラウンドが見えてきます。横の土手にはU字溝が幾つも置いてありますね。どれも真っ黒にこげているんですよ。そう、ここは村人のバーベキュー・メッカなんです。夏休みになれば、帰省した家族連れで溢れかえっています。あちこちで、煙が立ち昇っていますね。私達も帰省した友人や地元の仲間達と、薪を担いで出かけましょう。

まずは火を熾しましょう。この時、やたらと張り切る奴って必ずいませんか?鍋奉行ならぬ、火熾し奉行。このグループでは、土建屋の秀樹です。近寄らないほうがいいですよ。
「あ〜ダメ!ダメ!そんなん突っついちゃぁ」
「 オラホに任して、オイは野菜でも切ってろや」
「アチ〜なぃ。オイ、ビールくれや」
「今日は何人いるだ?薪、こんなんで足りるかやぁ?」
始まりました、秀樹のシキリ。こうなると薪が燠になるまでの間、U字溝から半径1m以内は立ち入り禁止となります。さすが土建屋!「作業半径内 立ち入り禁止!」来年はバリケードも用意しましょうか?

燠が出来上がれば、いよいよ焼肉ですね。ささっ、お奉行様、こちらでございます。出ました、魚屋の梅ちゃん。右手に菜箸、左手に塩コショウの完全武装。魚屋とはいえ、元々は料理人です。料理の薀蓄には素晴らしいものがあります。
「あにやってるだぁ。塩コショウは両面かけちゃダメだっつうの!」
「あ〜〜、それはまだ早えぇってば。ひっくり返すなよ」
「これ、いいぞ。炭んなる前に食っちまえよ」
ハイハイ、またまた「作業半径内 立ち入り禁止!」ですね。毎年の事ですが、この二人がいれば私達はビール片手に食べるだけです。便利なお奉行様達でしょう?

お腹が満たされると、子供達は川遊びですね。子供は本当に水遊びが好きですね。ワイワイ、キャーキャー遊んでますよ。あれ?大人も一人いますね。子供達から少し離れた所で四つん這いになってます。あれは大工の誠ですねぇ。あの格好は「探り」ですよ。

「探り」は面白いですよ。川の中をそっと歩くんです。驚いた魚は石の下に逃げ込みますよね。釣りの場合は、これで終わりですね。逃げ込んだ魚は、石に貼りついて動きませんよ。「探り」は、この魚を狙うんですよ。魚は上流を向いています。下流から、石の下にそっと手を入れてみて下さい。・・・ブルブルッ!「うわっ!びっくりしたぁ!」ほら、魚に触ったでしょう?それを捕まえるんです。

「お〜い!マコト〜!捕れたか〜?」気が付けば、私達も川に入ってますね。秀樹と梅ちゃんは、もう探り始めています。川底の石を片っ端から探っているようです。
ブルッ!ときたら、魚を石に押し付けたり、中指と人差し指で尾鰭をしっかり挟んだり。一瞬のことですから、格好良く捕ろうなんて無理ですよ。誠なんか、エラに指を入れたり、腹に指を刺す、なんて荒技も持ってます。アレレ?いつの間にか、カミサン達も始めてますよ。Tシャツの前だけ、ビッショリに濡れちゃうのに・・・。まっいいか。皆んな子供の頃からやってる事ですからね。

最近、漁協で「探り」を禁止するとかしないとか。トッカン(石打ち)と川干しは既に禁止されています。子供達に教え伝えたい遊びの一つなんですがねぇ。

さて、今度は支流に入ってみましょうか?最初は茂沢あたりがいいですかね。