川原の我が家
2002/10/26

依田川をもう少し上ってみましょうか。大淵、中淵が見えてきます。ウグイを釣ったり泳いだり、夏には子供達が思い思いに遊んでいます。ウチの息子が釣りに夢中になったのも、ここでウグイを釣ったのが始まりでしたね。釣れない日は潜って魚鑑賞してましたよ。ここを過ぎると我が家が見えてきます。ウチのすぐ上で武石川と出合うんですが、せっかくだからちょっと寄りません?一服してきましょうよ。

「いらっしゃい。さあ、上がって。汚ねえ所だけど、ゆっくりしてってくれやなぃ」オイは何飲むんだ?お茶かぃ?酒かぃ?好きなもん飲んどくれ。遠慮すんなゃ。川ぁ歩くのも寒ぃだず?酒でも飲んで暖まってから行かずぃ。

えっ、これかい?これはなぁ、二年前に釣った岩魚の魚拓さぁ。本沢で上げただょ。いい魚だず?もうちっとで40ってとこかなぁ。この辺じゃぁでけぇ方だわ。腹ぁ黄色くてな、顔なん真っ黒だったで。魚拓に刺してあるのがそん時の毛鉤だわぃ。こんなもんで釣れちまうんだから、不思議なもんだわな。昔は色んな毛鉤を作っちゃぁ試してたもんだがね、最近は殆ど一本しか使わねぇなぁ。胴は孔雀で羽はグリズリーってやつだ。フライに凝ってた時、集めた毛さね。

フライってのも面白ぇけどな、小せぇ沢に入ると釣り辛ぇわな。沢に入るんなら提灯がいいわ。4.5mの硬調竿に0.8号の糸を一尋だ。毛鉤をチョン、チョン、ツーってかんじで流すだけさね。あんまり長く流しすぎねぇようにな。石の周りを流れにまかせてチョコっと流せばいいだょ。食いっ気のある時なら宙に浮いた毛鉤にまで飛びついて来るで。必殺空中殺法なんちゃってな。桑原玄辰って人だったかなぁ、テンカラで空中殺法やるらしいで。名人っちゅうのは凄ぇもんだなぃ。

浮いてる毛鉤に来ねぇ時は沈めてやればいいわ。毛鉤なんか同じやつでいいわさ。ただ、沈めた時っちゅうのは毛鉤を少し動かしてやった方がいいみてぇだな。いきなり「ガツン」って来るで。これで来なきゃぁ餌釣りだわな。浅瀬の石をはぐってみりゃ川虫が付いてるわ。尻にチョン掛けして流せばいいわさ。全くのミャク釣りだわな。鉤?鉤なんか毛鉤の毛むしり取っちまえばいいだねぇか。あっ、そうだ。石をはぐったら、そのまんま元に戻してくれやな。また川虫が付くでな。

川虫で釣れなきゃぁ諦めれや。魚が居ねぇか、よっぽどウデが悪いだ。ウデっつったってなぁ、たいした技術なん要らねぇだよ。流れにまかせて流せばいいだけだもんな。たぶん、近づき方が悪いんじゃねぇかなぁ。「木化け、岩化け」って知ってるかぃ?魚に気付かれちゃぁいけねぇだよ。落ちてる小枝を踏んだだけで魚なんて散っちまうかんな。オラァ近づく時ゃ屈んで近づくで。

学者の言う事じゃぁ、魚の上方視野ってのは約97度の円錐の底面なんだと。そこに水の屈折作用が加わって、かなり広く見れるらしいで。難しい事は良く分かんねぇけど、魚ってのは人間よりはるかに視野が広いって事だわな。まあ上手く近づけりゃぁ、なんとか釣れるもんだわぃ。

オッ、カミサンが帰って来たわい。キノコ採りでも行って来ただかぃ?ちゅうことは、今夜はオザンザだわね。オイも食ってけや。

話は尽きませんが、そろそろ出かけましょうか。いよいよ依田川の支流、武石川の出合いです。上流には美ヶ原が広がります。この川は支流が多いので、主な支流にも入ってみましょうね。